成分から決めると、原価で詰む|処方より先に決めるべき3つのこと
「成分は良いはずなのに、売れない」という相談は、開発の順番が逆になっていることが少なくありません。結論から言うと、①処方が決まらない案件の多くは成分から入っています。②成分を先に固定すると、原価とぶつかったときに動かせるものが何も残りません。③先に決めるのは「誰に・いくらで・どう続けてもらうか」で、そこから逆算すれば成分は選択肢に戻ります。
「この成分は譲れない」から始めると、何が起きるか
配合を先に固めた案件は、原価が出た瞬間に選択肢が2つに減ります。売価を上げるか、企画を畳むか。
売価を上げれば売り方が変わります。ところが売り方はまだ決まっていないので、上げた価格に見合う売り場も訴求も用意できていない。そのまま押し切ると、成分表は立派なのに動かない商品ができあがります。開発としては完成していて、事業としては失敗している状態です。
譲れないものが「成分」になっている状態は、実は危うい。本来譲れないのは「誰の、何を解決するか」であって、成分はその手段のはずです。手段が目的の位置に移った時点で、原価との交渉材料が消えます。
処方より先に決める3つ
- 誰に売るか:どの売り場か、どのチャネルか、どんな状況の人か
- いくらで売るか:定価、定期価格、1回あたりいくらになるか
- どう続けてもらうか:単品か定期か、何ヶ月で結果を見る設計か
この3つが決まると、原価の上限が自動的に決まります。BELTHYが配合の議論に入るのは、ここから先です。順番を逆にしないだけで、試作の回数は目に見えて減ります。
それでも原価が合わないときの、削る順番
原価が合わないことは、どの案件でも起きます。問題は、起きてから削る対象を探し始めることです。BELTHYは配合を組む前に、発注者と一緒に次の順番を紙にします。
- 削らないもの(この商品が存在する理由。ここを削るなら企画ごと畳む)
- 量を減らせるもの(配合量に幅を持たせられる成分)
- 置き換えられるもの(同じ役割で原料グレードを下げられるもの)
- 外せるもの(あったほうが良いが、無くても商品として成立するもの)
この順番を原価が出る前に決めておくことは、BELTHYが譲らない一線です。原価が出てから話し合うと、必ず「声の大きい人が守りたいもの」が残り、商品の芯のほうが削られます。順番が先に紙になっていれば、削る作業は感情の問題ではなく事務作業になります。
「体にいいのに売れない」の多くは、ここで決まっている
中身の良さは、それだけでは伝わりません。誰にいくらでどう届けるかが決まって、はじめて中身の良さが伝わる形になります。リニューアルの相談を受けるとき、BELTHYが処方より先に売り方の3つを確認するのはこのためです。
まとめ
処方が決まらない案件は、処方が難しいのではなく、決める順番が逆になっています。売り方の3つを先に決め、原価の上限を出し、削る順番を紙にしてから配合に入る。この順番だけで、開発は止まらなくなります。
よくある質問
Q. すでに発売した商品でも、順番をやり直せますか。
A. リニューアルのタイミングで組み直せます。売り方から決め直すと、配合を大きく変えなくても訴求と価格設計だけで動きが変わることは珍しくありません。
Q. 原価の上限は、どのくらいの粒度で決めればいいですか。
A. 「原価率◯%以内」まで決まっていれば十分です。金額まで固めなくても、上限が言語化されていれば処方の議論は進みます。
著者プロフィール
松尾和美(まつお・かずみ)/食品ブランドプロデューサー・管理栄養士。株式会社BELTHY代表。市場調査・コンセプト設計から処方・成分設計、OEM工場のディレクション、パッケージ、発売後90日の育成までを一気通貫で手がける。手がけた商品に、海外7カ国で展開し累計100万食を突破した焼き芋菓子「AMAGURA」、発売初年度に10万袋・Amazonランキング1位を獲得した「NEOわらびもち」(商品開発・ディレクション・PRを担当)など。
間違えられない食品の開発は、BELTHYにご相談ください。市場調査・コンセプト設計から処方、OEMディレクション、発売後90日の育成まで一気通貫で伴走します。
お問い合わせはこちら